『私のオーストリア旅行』
第36話 " ザルツブルク 2 "
------ Hoehen Salzburg ------
バロック様式の馬の噴水と、グロッケンシューピール、モーツアルトの銅像のある大きな広場から離れ、しばらく歩くと、街並みはそのままに、道は登り坂になり、ホーエンザルツブルク城 Hoehen (=high) Salzburg が覆い被さるように目の前に迫ってきました。隣の家の続きと思しき場所の奥まった場所に入ると、忽然とケーブルカー乗り場が目の前に現れました。私の認識では、遠くからでもそれとはっきり分かる別の建物で赤や緑の屋根、小さな乗車券売り場がある。これが正しいケーブルカー乗り場であるべきで、これはちがうと頭の中は混乱しているのですが、戸惑っている暇も無く、列に続いて乗り込みます。
お城は、街から急に立ち上がる地形の頂上にあるのか、街が次第に広がりお城のある丘に向けて登ってきたのか、街とホーエン・ザルツブルク城は、ピッタリと寄り添っているようでもあり、切り立った城塞の外壁は人々を容易に寄せつけない険しい関係をも想像させます。もう、富と権力を誇った大司教はいない、それならと、街の中から、こっそりケーブルカーをつくり、登るぞという決意もなしに、デパートで二階に行くように気軽にホーエンザルツブルグ城へ我々を導く、なんとこしゃくな設計でしょう。
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ホーエン・ザルツブルク城は、1077年に建築が始まって以来、歴代大司教が増築、1681年に現在見られる外観となったとの事ですが、その昔、牢獄だった部分もあり、あまり装飾性のない、素朴なたたずまいです。よく保存されていますが、修復は絶えず行われているようです。町から見上げたときには分からないのですが、ザルツブルクを一望のもとに出来る一番景色の良い場所は、赤いチェックのテーブルクロスのかかったテーブルとイスが並べられた屋外のレストランになっています。乾燥した空気と吹き抜ける心地よい風で、乾ききった喉を潤して、ゆっくり景色を味わってもらおうと、観光都市ザルツブルクは、旅人に親切な配慮を忘れる事はありません。
ゆるく蛇行しながら流れるザルツァッハ川を真ん中に、その左右に広がった街並みはさながら、有名料亭のお弁当のよう。今しがた歩いていた歴史に彩られた美しい建物がぎっしり並ぶこじんまりした街並みは、大きな緑色のフィールドを従えて、人の営みが川岸から広がった事を容易に想像させます。ウィーンやミュンヘン等の大都会と違い、暖かい人の心がどこにでも届きそうな、安心感が漂う町でした。現在その旧市街は、世界文化遺産に指定されています。
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上からは見えませんが、街と180度反対側に回り込むと、切り立った崖は同じですが、ぽつんと小屋のようなものが一軒あるだけあとは野原です。その昔ここに首切り役人が住んでいて、その人がいなくなっても誰も家を建てなかったということですが、さて今はどうでしょうか。
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再び町に戻った我々に、久しぶりにしばしの自由時間が与えられました。
約束の時間にバスが迎えにくる場所は、観光用の馬車が、ひづめの音も高らかに行きかう広い場所で、背後に美しい絵が描かれた、かつての馬の水飲み場です。この前を頻繁にいきかう馬達が、この水を飲んでいるところは見なかったので、今も利用されているかどうかは不明です。
その時以来
「馬を水辺に連れて行くことは出来るが、飲ませる事は出来ない。」
(You may lead a horse to the water, but you can't make him drink..)
という諺を耳にするとき、私はいつもこの水飲み場を頭に思い描いています。♪
この他、ザルツブルクの誇る数々のもの
モーツアルトの生家のある一番の繁華街ゲトライデガッセ、モーツアルトクーゲルンという名のチョコレート菓子、ザルツブルクノッカーとよばれる甘いおやつ、おもちゃ博物館、鳩が舞い、地元の人々が散策するモーツアルト広場、レジデンツ、教会、祝祭劇場・・・・・・。スケジュールに追われて足早に通り過ぎるしかなかった場所をもう一度、自分の足で歩き、胸に秘めた思いを探したり、確かめたりするには短か過ぎる時間、魅力的過ぎる町です。でも、旅は終わりに近づいています。お土産を買う最後のチャンスになるかもしれない。この時間をフルに使いたいと、約束の場所と時間を聞くのもそこそこに、全員がそれぞれの目的に向かって、一目散に走り去って行きました。
【補 足】 ザルツブルクについてもう少し
【お詫び】
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